Furia(フリア)

ポーランド南部の工業都市Katowice(カトヴィツェ)でNihilによって2003年に結成されたブラックメタルバンド。

初期の頃はノルウェジアンブラックを感じさせるプリミティブなブラックメタルをやっていた。メンバーはDarkthroneやIsengard、Taakeなどのノルウェジアンブラックが好きなようで、ライブでもカバー曲を演奏することもある。Darkthroneの”Under a Funeral Moon”のカバーはまだわかるのだが、Isengardの”Neslepaks”のカバーなんて、そんな渋いチョイスをするバンドは世界広しといえど、なかなかいないかもしれない。とにもかくにも、Furiaの超初期の音源は、ノルウェジアンブラックの中でも比較的地下路線の音楽から多大な影響を受けていることが見受けられる。

ちなみにその超初期の音源である、2004年リリースのデモ”I spokój”は、Nihilがすべての楽器を担当している。その後Nihilと同じくMassemordでも活動するSars(Ba)、Namtar(Dr)、Voldtekt(Gt/その後いつの間にか脱退)が加入。2013年からはArtur(Gt)も加入する。

現在は実験的な要素も取り入れた、ポスト色の強いブラックメタルを演奏している。もともと初期の頃から一筋縄ではいかないブラックメタルを演奏していたものの、ここ最近はその傾向にさらに磨きがかかっている。2016年にリリースされたEPである”Guido”はシロンスク地方の炭鉱博物館で録音された。録音は、地下320メートルの場所にあるかつては実際に石炭が採掘されていた炭鉱で行われた。その奇妙な録音場所にマッチした、癖のある一風変わった曲を演奏している。

初期に比べると、純粋なブラックメタルファンは首をかしげたくなるようなアヴァンギャルド性をますます帯びてきたFuria。ただ初期の頃から変わらないのは、メロディにある種の温かみを感じさせるところ。まるでこの世に疲れ切ってもうあの世に行ってしまいそうな脱力感を漂わせながらも、どこか温かみを感じさせてくれる音は今も変わらない。

メンバーに関してだが、先ほども少しふれたように、Nihil(Vo,Gu)、Sars(Ba)、Namtar(Dr)は、”Massemord”というゴリゴリのブラックメタルバンドでも活動している。現在はFuriaに専念しているようで、こちらではあまり活動していないようだが、2014年辺りまではライブもやっていた。(ちなみにMassemordではNamtarがボーカルを担当しており、DrとGtはクラクフ出身のブラックメタル”Odraza”のメンバー)また、2013年から加入したArtur(Gt)も、”Thaw”というエクスペリメンタル・ブラック(ノイズ音楽と言ったほうが正しいかもしれない)でも活動しており、2015年にBehemothとヨーロッパツアーを果たしている。ベーシストのSarsも、一人で”Wędrowcy~Tułacze~Zbiegi”というポスト・ロックよりのだいぶエクスペリメンタルな音楽をやっている。NihilとNamtarもFDSというエクスペリメンタル・ブラックをやっていたこともある。(一応解散はしていないものの、活動はしていない様子)

ボーカルであり創設者のNihilは、レコーディングスタジオCzyściec(煉獄)のオーナーでもある。Furiaの音源はもちろんのこと、過去にInfernal WarやBesattなどもこのスタジオでレコーディングをしている。Nihil本人が「俺たちの曲はいつも森の中で作られているんだ」というエキセントリックな発言をしていたことがあるが、このスタジオは本当にシロンスク公園の森の中にあるのかもしれない。

Furiaは2014年にポーランド国内でツアーを行い、どの会場にも客が入り大成功。2016年にはMayhemとWateinのポーランド公演の前座も務めた。ただ、彼らは一貫してアンダーグラウンド性を貫いており、歌詞はすべてポーランド語である。時々、現在は使われていない古語のようなポーランド語も歌詞に組み込まれており、楽曲作成においては彼らなりのこだわりがあるようだ。とにかく、これからの活躍が楽しみなバンドのひとつである。

SAYUKIのお気に入り曲

★Idzie Zima(Martwa polska jesień/2007)
タイトルはポーランド語で「冬が来る」。ある意味Furiaの代表曲といっては過言ではないこの曲。わたしが初めて聴いたFuriaの曲は確かこの曲だったような。妙にテンポの良い浮足立つようなキャッチーなメロディと、Nihilさんの人間臭いシャウトに一気にハートをぶち抜かれた気がする。ライブでこの曲が演奏されると、最後の”Idzie martwa polska zima!(ポーランドの死の冬が来る)”のパートはたいてい観客の大合唱とともに終了する。ポーランド人の冬に対する暗鬱な気持ちと、逆にその冬にメランコリックな美しささえ感じてしまう相反する気持ちを表現したような曲で、ポーランド人ブラックメタラーの多くはこの曲に共感するのかもしれない。

★Zamawianie drugie(Nocel/2014)
タイトルはポーランド語で「第二のオーダー」。この曲を最初に聴いた時の感想は、「何この曲、調子狂う」。どことなく感じさせるノルウェジアン・ブラックにも通じる勇ましいヴァイキング感といい、Furiaらしい繊細さを感じさせるメロディーといい、聴いた途端に脳みそを揺さぶられたような。もちろんライブでも大盛り上がり。Nihilさんが曲名を言った時点で観客がかなり沸く。わたしもまたライブで聴きたい。

★Skądś do nikąd(Marzannie, królowej Polski/2012)
ポーランド語で「どこからどこへ」という意味のタイトル。もうイントロの切ないギターのメロディを聴いただけで胸が締め付けられる。あぁ、これわたしあれだ、よく六本木からの帰りの大江戸線で聴いてた。東京の片隅でポーランドに思いを馳せながら聴いてたんだよなぁ。と、なんだかしんみり昔を思い出したくなるような、そんな曲。「今日も行こう、どこからともなくどこかへと。明日もどこからともなくどこかへとたどりつくんだ。腰をおろす。そして何も食べずに次へと向かう」全く意味のわからない歌詞だけれど、当時のわたしのふらふらさまよう気持ちを表してくれていたんかな。

Furiaの音源購入できます→”Księżyc milczy luty”(2016)”Martwa polska jesień”(2007)

Official Website

 

画像引用元:http://supportblackmetal.com/furia-unleashes-new-song-nocel/