【Wędrujący Wiatr】僕たちの音楽は絵画のようなもので、ライブでは表現できない音楽だ。
今回インタビューに応じてくれたのは、ポーランドのアトモスフェリックブラックWędrujący Wiatr(ヴェンドルヨンツィ・ヴィアトル)。読み方がわからないバンド決勝戦で上位に入るのではないかという彼らですが、2016年にリリースされた2ndアルバム”O Turniach, Jeziorach i Nocnych Szlakach“が素晴らしい作品だったので、どうにかしてインタビューをさせていただきたいっ!!と鼻息荒くお願いをしたら、快く応じてくれました!Wędrujący Wiatrはポーランド語で「彷徨う風」。ポーランドの大自然を思わせる寒々しくも優しげな、琴線に触れる美旋律を作り出すWędrujący Wiatrのインタビューをどうぞ!
Razor & W.(Wędrujący Wiatr) × Metal Mania Sayuki
SAYUKI(以下S):昨年10月末にリリースされた最新アルバム”O turniach, jeziorach i nocnych szlakach”ですが、ポーランドの豊かな自然の風景を連想させる美しい曲ばかりで、かなり気に入りましたよ!このアルバムに込められた意味などを教えていただけませんか?
Razor(以下R):僕たちの曲は、故郷の自然を描いた絵画のようなものだと思ってるんだ。君たちリスナーは、この国の伝説やおとぎ話、そして僕たちが創りあげた物語の軌跡をそこに感じることができる。たとえば、”Ja, Wiatr”は風についての物語だ。君たちも知っているように、風は放浪者みたいなもんだ。彼(風)はどこにでも行けて、すべてを見ることができる。だから、時として彼は悪い知らせも僕たちに届ける。だから誰も彼には会いたくないのさ。彼はとても孤独な存在なんだよ。
W.(以下W):僕はそこに民族文化を加えるだけ。風は昔からよく生きた人間として例えられることがあるよね。多くの神話は風の存在とともに創られてきた。風はおそろしいもの、時には邪悪なものとみなされていたんだ。
S:わたしはポーランド語が堪能ではなくて、歌詞についても100%理解できないのですが、今回の新譜の歌詞はところどころポーランド語ではないような・・・ポーランドの古い言葉を使っているのか、それともどこかほかの国の言葉ですか?
W:すべての歌詞はもちろんポーランド語だよ。でも、歌詞の随所にタトラ山脈(ポーランド南部の、スロヴァキアとの国境沿いに広がる山脈。山が少なく平地だらけのポーランドでは貴重な山脈である)やヴァルミア地方(ポーランド北東部の地方)の方言を使っている。ポーランド語をよく知らない人からしたら、別の国の言語に聞こえるかもね。
S:どんなことについて歌っているのですか?
W:僕たちは、伝統的な文化を通して表現された、人間と自然の関係に興味を持っているんだ。そして、絶望的なロマン主義という立場から、それについて調べて歌詞を作る。僕たちの歌詞は伝説、神話、寓話について触れているけど、すべてポーランドの民族文化に基づいたものだよ。
S:曲を作るにあたって、何からインスピレーションを得ているのでしょうか?
W:基本的に僕たちの世界観、興味、僕たちが住んでいる土地、その土地の文化や自然から得ている。
S:話は変わりますが、お二人の出身地は、ポーランドの東北部と南部でかなり離れていますよね。どのように知り合って一緒にバンド活動を始めたのですか?(※Razorはポーランド南部の小さな町に、W.はポーランド北東部の地域に住んでいる)
R:2008年に僕はUniewit(StworzやKresのメンバー)と出会って、一緒にバンドを始めたんだ。当時、W.はUniewitと親しかったんだよ、いや、今でも親しいけどね。だから僕とW.が知り合うまでも、そう長くはかからなかった。僕はW.が活動するペイガンフォーク・メタルバンドStworzのアートワークを手伝った。それからしばらくして一緒にWędrujący Wiatrを始めたんだ。
S:お二人が影響を受けたアーティストやバンドはいますか?
W:あんまりいないかなぁ。読んだり、見たり、聴いたりしたすべてのものは何らかの形で僕たちに影響を与えていると思うけど、「さて、彼らと同じようなことをしてみよう」と思わせるバンドはいないな。
R:個人的には、このジャンルの有名なバンドたちと自分たちとを比較するのは好きじゃない。W.はこの質問に対する的確な回答をしてくれたよ。
S:個人的にあなたたちのライブを観てみたいのですが、ライブを行う予定はありますか?
R:今のところ予定はないけれど、時々ライブについては考える。まぁそのうちわかるはずさ。
W:僕はそうは思わない。Razorが僕たちの音楽は絵画のようなもんだって言ったけど、僕たちはライブでは表現できないような音楽をやっていると思うんだ。一度描いてしまえば、君たちは満足するまでそれに価値を見出すことができる。でも、画家が君の前に座って、また同じ作品を描けるかと言ったら・・・それは期待できないんじゃないかな。ナンセンスな比喩かもしれないけど、僕にはこうとしか思えない。
S:RazorさんはWędrujący Wiatr以外でもPustotaというブラックメタルバンドでも活動していますよね。しばらく音源を出していませんが、そちらの今後の活動も知りたいです。
R:特に予定はないよ。ちょっと前にまた活動しようかと試みたんだけど、あんまりうまくいかなかった。だから、現時点では何も確約できない。Wędrujący Wiatrが僕の主なプロジェクトだし、今はこのバンドに焦点を当てているよ。
S:また、RazorさんはMisty Visions ArtというレーベルでCDジャケットやバンドロゴデザインをされていますよね。これはRazorさんがおひとりで運営されているのですか?どの作品もかなり素敵なのですが、もともとデザインやフォトグラフの勉強などをされていたのでしょうか?
R:レーべル経営はすべて一人でやっているよ。デザインやフォトグラフに関しては独学だから、特にこの方面の勉強をしたわけじゃない。
S:そうだ、日本のバンドで何か知っているバンドっていますか?
W:いるよ。たとえば、Gallhammer、Metalucifer、Baalとかそこらへんの。でも大ファンだとは言えないな。あ、日本のRAC(反共産主義)バンドはすごく好きだよ。Jin rai(仁籟)とかSledgehammer(鐵槌)とか。
S:ところで最近、わたしのサイトでWędrujący WiatrのCDが日本のメタルファンにちょこちょこ売れているのですが・・・
R:近いうちに警官が君んちのドアをノックするよ(笑)うそうそ、冗談だよ、売ってくれて何の問題もないよ。
S:最後に、日本のファンに何かひとことお願いします!
R:僕たちに目を向けてくれてありがとう。良い一日を!これからもよろしく!
W:インタビューを読んでくれてありがとう!Banzai!
【終】
昨今、日本でもじわりじわりと、一部の音楽ファンの間で人気が出てきているこのバンド。彼らも最近は海外からのインタビューに応じることもあり、これからどんどん活躍していきそうな気がします。それにしてもW.氏、だいぶマニアックな日本の音楽シーンをご存知のようで驚きました。
【CD】Wędrujący Wiatr”O Turniach, Jeziorach i Nocnych Szlakach”(2016)
【CD】Wędrujący Wiatr”Tam, gdzie miesiąc opłakuje świt”(2013)
写真引用元:http://www.metal-archives.com/bands/W%C4%99druj%C4%85cy_Wiatr/3540366351、
https://www.last.fm/music/W%C4%99druj%C4%85cy+Wiatr