Arkona(アルコナ)

1993年から活動しているペイガン・ブラックメタル。ポーランドのブラックメタル黎明期を支えてきたバンドのひとつである。Arkonaというと、同名のペイガン/フォークメタルバンドがロシアにもいるが、ポーランドのArkonaはペイガン”ブラック”メタルだ。

メンバーは入れ替わりが激しく、オリジナルメンバーはArkonaを立ち上げた人物でもあり、リードギターのKhorzonのみ。彼はギターのみならず、ボーカル、ベース、キーボードまでもこなすマルチプレイヤーだ。ほか、現在の正式メンバーは、Marduk直系ファストブラックメタルバンド、Taran(タラン)のNechrist(Gt)、Drac(Vo,Ba)、Zaala(Dr)である。ちなみに、KhorzonはMussorgskiという、アンビエント要素も含むインダストリアル・ブラックメタルプロジェクトもやっている。

わたしなりにArkonaの曲の特徴を挙げるなら、クサいペイガン・ブラックメタルだろうか・・・。時折顔を出すキーボードの音色がまた狙ったかのようにクサくて良い。最近でこそ、音質がクリアになりアンダーグラウンドさがだいぶ抜けてしまったものの、2000年代までは、ローファイさの残る地下臭たっぷりのブラックメタルを演奏していた。かつてのArkonaは、チリチリとしたギターの音とチープなキーボードの音色が、いかにも人を選ぶ音楽といった雰囲気を出している。ここ数年は、ローファイ路線を変えたのか、音質も演奏力も格段に上がっている。それでも、良い意味で垢抜けないArkonaらしいメランコリックなメロディは健在だ。

しかし、昨今NSブラックメタルの排除活動に力を入れているAntifa(反ファシズム)団体【注1】に目を付けられてしまったArkona。残念なことに、Antifaによってライブを中止に追い込まれるケースが続出している。2016年の11月にフランスの4都市で行われたミニツアーでは、パリ公演が中止、2017年1月に行われたBatushkaとのヨーロッパツアーでは、スロヴァキア公演が中止となってしまった。理由は、ネオナチ疑惑がかかっている人物が過去にArkonaでギターを演奏していたからだという。その人物は、Infernal WarのギタリストであるTriumphator。2005~2015年の長期にわたりArkonaに所属していた。なお、Infernal Warは自身がNSブラックであることは否定している。(が、もともと”Infernal SS”という名前で活動していただけに説得力には欠けるかもしれない・・・)

パリ公演が中止になった後、メンバー自身は「Arkonaはブラックメタルであって、NSブラックではない。そして、歌詞にはファシズムや国家社会主義に関する類のものは一切含まれていない。我々は異教、反キリスト教、死、人間の存在について焦点を当てている。気になるなら歌詞の内容をチェックしてみてほしい」と主張している。しかし、その主張を知ってか知らずか、Antifaはスロヴァキア公演も中止にさせてしまったのだ。

ベテランポーリッシュ・ペイガンブラックメタルとして貴重な存在のArkona。今後もAntifaに活動を阻まれることが起きるかもしれないが、屈強に負けずに頑張ってほしいところである。

【注1】Antifa団体は2016年から精力的にNSブラックメタルバンドを排除する活動をしている。ポーランドのバンドだと、Arkona以外にもGravelandがカナダでの公演を中止にされている。また、ブラックメタルバンド排除に注力したAntifaのFacebookページでは、彼らによってNSブラックとみなされた世界各国のバンドが掲載されたリストが上がっている。ここにArkonaもリストアップされてしまったのだ。有名どころのバンドでは、Darkthrone、Dissection、Burzum、Mardukなどなど、数えきれないほどのバンドがリストアップされている。ちなみに、カバー写真はTaakeのHoestが催涙スプレーのようなものを噴射されているコラージュ写真になっている・・・失礼なことをするもんだ。

 

SAYUKIお気に入り曲

★Zrodzony z ognia i lodu(Zrodzony z ognia i lodu / Mankind’s Funeral・2004)
美しく耳に残るキーボードの音色から始まったかと思いきや、そこから怒涛のペイガンサウンドが繰り広げられる。10分超えの曲だが、とにかく最初から最後まで勢いよく泣きのメロディで攻めまくる!「俺は氷の戦士だ。俺の血が静脈を燃やす。俺は炎と氷から生まれたのだ」と、熱いんだか冷たいんだかなんだかもう訳がわからない歌詞もポイント高し。Szronとのスプリットに収録されているが、Szronもなかなか郷愁を誘うデプレにも通ずるブラックメタルをやっているのでオススメ。

★Droga do ocalenia(Lunaris・2016)
タイトルはポーランド語で「救済への道」。メロディがどことなくワルツっぽさを感じさせる・・・。実直に奏でられるその美しい音色は、過去のローファイで地下くさ~いArkonaを脱ぎ捨てて、新生Arkonaへと進化するかのような様子を見せつつ、やっぱりこのメロディはArkonaだわ!と感じさせてくれる安心の一曲です。(わかりづらいわ)

Arkonaの音源はこちらから購入できます→Lunaris(2016)

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画像引用元:http://www.metal-archives.com/bands/Arkona/3197