Batushka(バトゥシュカ)


2015年の冬、突如としてブラックメタル界に現れたスリーピースバンド。

当初はロシア出身という噂もあったものの、ポーランドの東部ビャウィストク出身。Христофор(Krzysztof Drabikowski)という男性を中心に結成された。バンド創設当初は、作曲からギター、ベースの演奏、アートワークの制作、レコーディング関連はすべて彼が一人で行っていた。また、ボーカルとして同じくビャウィストク出身のВарфоломей(Bartłomiej Krysiuk)が加わる。彼はレーベルWitching Hour Productionsの経営者であり、Hermhというシンフォニック・ブラックメタルバンドでも活動しており、ポーランドでは名の知れた人物だ。そのため、まだ彼らの身元が明かされていなかった初期の頃、「有名バンドのメンバーが在籍している」という噂が流れた。正式メンバーとしてドラムを叩いていたのは、Sinful Soulsというデスメタルバンドなどでも活動するМартин(Marcin Bielemiuk)。彼は現在すでにBatushkaを脱退している。

バンド名のBatushkaはロシア語で”父”(お父さんではなく宗教的な意味の父)を意味し、広義的には正教会の司祭の称号を指す。バンド名発音は「バトゥシュカ」が一番現地(ポーランドでの)読みに近いかもしれない。しかし、ロシア語に忠実に発音するならば「バーチュシカ」。彼らは、神父のようなコスチュームを身にまとい、聖歌を感じさせるような神聖なコーラスを多用しているせいか、「クリスチャン・ブラックメタル」とジャンル分けされることもある。しかし、単に宗教や東方教会からインスピレーションを受けているだけで、特にクリスチャン・ブラックメタルではないようだ。むしろ、よく衣装のデザインなどを見ると、東方教会の十字架が逆さになっているのが分かる。

何はともあれ、正体不明という時点で掴みバッチリなバンドだが、人気なった所以のひとつは彼らの音楽性だ。1stアルバムとしてリリースされた『Litourgiya』は、薄気味悪くも神聖な雰囲気を漂わせつつ、颯爽と爆走する突き抜けたメロディが斬新で話題を呼んだ。ブラックメタルらしい地下臭さもありつつ、ドゥームメタルらしいどんよりした暗さもあり、それでいて演奏している音はかなりとっつきやすいので、エクストリームなメタルの初心者も安心して聴ける作品だ。

彼らは2016年の8月にはすでに、ドイツで行われたSummer Breeze Open Air (AbbathやSabaton、Arch Enemyなども出演)に参加し、10月にはBehemothと共演し、ポーランド国内ツアーを行った。なんと2017年の8月にはWacken、Brutal Assaultへも出演。その後もアメリカツアーを行うなど、精力的に活動していた。

しかし、2018年の12月末日、創設者であるХристофорが、バンドを乗っ取られたという動画をYouTube上で公開。バンドのSNSにログインできなくなり、Варфоломейが自分抜きで勝手に新作の制作を始めてしまったという。この動画は多くのファンを驚かせ、Варфоломейが牛耳るようになったオフィシャルFacebookページでは非難の声も相次いだ。

その後、Христофорはバンドを取り返すべく、弁護士を雇い、Варфоломейが自分の許可なしに音源を使用したりライブを行うことを禁止させるという内容の裁判を申し立てようとしたが、却下された。

とはいえ、Batushkaがここまでの人気を得るようになったのは、実はВарфоломейのおかげでもあるそうだ。Batushka結成当初、Христофорはスタジオアルバムさえ作れれば良いと考えており、ライブなどを行う予定は無かったという。しかし、レーベル経営などでビジネスのノウハウをある程度心得ているВарфоломейが、衣装をデザインし、ライブをブッキングし、精力的に全世界で公演を行うようになった。実際に、毎回新作が出る度に魅力的なラインナップでファンを喜ばせるBatushkaのマーチを担当しているのもВарфоломейだ。一方で、凝り性で完璧主義のХристофорは、ライブの前に必ず数時間かけて自分で全楽器のサウンドチェックを行うなどの徹底ぶりだったそうだ。

現在、Batushkaは2つのバンドに分かれてしまった。ひとつが、創設者ХристофорのБатюшка(もう一方のBatushkaとの差別化をはかるためか、分裂当初はバンド名がキリル文字表記になっていたが、現在は双方ともキリル文字を使っているため区別がつきにくい)、そしてもうひとつはВарфоломейが中心になって活動するBatushkaだ。

前者は、2019年5月26日に『Панихида』というアルバムをデジタル音源でリリース。制作は基本的にХристофор一人で行われた(アディショナルボーカルとして2名のボーカルもゲスト参加している)。後者は、アメリカの大手レーベルMetal Blade Recordsと契約し、『Hospodi』というアルバムを2019年7月12日にリリース。正式メンバーはВарфоломей(ボーカル)、Paweł Jaroszewicz(ドラム/Hateなどにも在籍)の二人。一時期、サポートメンバーとしてBatushkaのツアーにギタリストとして帯同していたFuriaのArtur Rumińskiが作曲を手掛けている。

SAYUKIお気に入り曲

★Yekteniya 3(Litourgiya/2015)
このアルバムの曲は全曲捨て曲なし&何度聴いても飽きないので、お気に入りを選ぶのが難しい・・・が、あえていうならばこの曲だろうか。冒頭のチリンチリンチリンカチャカチャカチャの部分は、ライブでは観客が一体となって手拍子をとるため、かなり盛り上がる。そして、終始潔く突き抜けた音がたまらなく癖になるんだよなぁ・・・わたし語彙力ないなぁ・・・

 

 

画像引用元:http://www.metal-archives.com/bands/Batushka/3540404077