【Blutfahne】中世ヨーロッパは俺たちの歴史の中で最も素晴らしい時代のひとつだと思っている。

2009年にウクライナの首都キエフで結成したBlutfahne。ペイガン・ブラックメタルСваргаにも在籍していたImogrimと、フォーク・ブラックメタルDross Delnochでも活動するYarvurのツーピースバンドだ。「European Medieval Ambient Black Metal」という独特なジャンルを自称しており、アートワークや曲からも中世へのこだわりが感じられる。2019年にリリースされた2ndアルバム『Twilight of Faith(信仰の黄昏)』は、勇壮でどこかヒロイック、そして叙情的なメロディーとともに疾走し、聴く者を中世の世界へといざなってくれる。今回は、バンドの創設者で、キエフに拠点を置くブラックメタル専門店「Necropolis」の運営にも携わるImogrimことVladyslavに話を聞いた。

Sayuki(以下S):インタビューに応じていただきありがとうございます。まず最初に日本の読者に、Blutfahneのバイオグラフィを簡単に紹介してもらえますか?

Imogrim(以下I):バンドの始まりは2008年にさかのぼる。その頃に最初の歌詞が作られ、それがデビューアルバム(1stアルバム)の讃美歌となったわけだ。そして年明けからは、2010年にリリースされることになるそのアルバムの制作に取り掛かった。

S:バンド名のBlutfahneはドイツ語で「血の旗」を意味しますが、なぜこの言葉をバンド名に選んだのですか?

I:このバンド名は、古代から現在までの世代の繋がりを象徴しているんだ。この旗は、国家を導くすべての栄光を秘めたシンボルとして使われていた。血は聖なるものを補ってくれる。そして俺たちは皆知っている、真の光は皆それぞれの心の奥底にある聖杯からのみ得ることができると。

S:Blutfahneは「European Medieval Ambient Black Metal」を自称していますね。バンドの各SNSへの投稿などを見ても、あなたは中世へのこだわりが強いように思います。中世の何があなたをそこまで惹きつけるのでしょうか?

I:もともと俺は歴史に興味があるんだ。興味深い時代はいくつかあるが、中世ヨーロッパがまさにそのひとつなんだよ。俺の主観的な意見としては、欠点はあるものの中世ヨーロッパは俺たちの歴史の中で最も素晴らしい時代のひとつだと思っている。騎士道、異教、都市計画、新たな土地の開発や植民地化、秩序。それらすべてが、偽りのない興味を呼び起こし、ますます俺は心を奪われるんだ。まさにこれらの理由から、Medieval Black Metal(中世ブラックメタル)のコンセプトが生まれたんだよ!杯、カタリ派(訳者注:12~14世紀、中世ヨーロッパに存在したキリスト教の一派。二神論を基本としており、当時は異端とされていた)、ボゴミル派(訳者注:10世紀のブルガリアで興ったキリスト教異端派。カタリ派の元になったという説もある)、十字軍、テンプル騎士団、西と東の戦いの幕開け……

S:1stアルバム『The Circle of Eternal Return』はキーボードの音色が印象的ですが、アートワークもスペーシーな印象であまり中世らしさは無いように感じます。いつから今の中世ブラックメタルスタイルを意識するようになったのでしょうか?

I:1stアルバムは、後の作品とは異なる概念でデザインされているんだ。歌詞は19~20世紀初頭の形而上学的な概念に基づいている。さらに、その時代のヨーロッパ人の存在についてダイレクトに問題提起をした。その後、真の光を目にするためにより古い過去を掘り下げたんだ。部分的に調べただけじゃ、物事について語ることはできないからね。詩の蜜酒を準備するにはたくさんの材料を揃える必要がある。そうすることで、まともな結果が得られるんだ。

S:2010年に1stアルバムをリリースしてから、7年間何の音沙汰もありませんでしたが、その間は何をしていたのでしょうか?

I:その間、道を探し求めていた。真実の道しるべを見失い、俺たちは再びそれを見つけ出すために多くの時間を費やした。その兆しを探し求め、自分自身の中を旅して、創造の新たな境界を開いた。それには7年の月日がかかったが、無駄ではなかったよ。7は神秘的な数字だし、俺たちが再びその道に乗り出すためにまさに必要な年月だったと思っている。

S:曲を作る時は、何からインスピレーションを受けているのでしょうか?やはり中世の歴史や文化ですか?

I:それは、俺がどこにいてその瞬間に何が起きるか、どんな本を読んで、どんな音楽を聴くかといった事実によるな。思考は無数の星々のように広がっていて、それぞれが心の渦の中にある新たな境地なんだ。時には、秘密の中の秘密を守り続ける兄弟にもなりうる。古代ルーシ族の戦士のように。歴史は熟考のための材料を無数に与えてくれるし、細い道が闇の中に伸びていくように素晴らしいものなんだ。そして、現実の向こうで何と遭遇するかは誰にも分からない。

S:Blutfahneはマーチや音源のアートワークも素晴らしいですよね。アートワーク関連はどなたが担当しているのでしょうか?

I:バンドのコンセプトはすべて俺が決めているよ。ビジュアル面は音楽の要素に劣らず重要なものだからね。特にブラックメタル(!)では、イデオロギー的な側面が最も重要視されていると言っても過言ではない。グラフィック面では、アイディアを物理的な形で具現化してくれた友人たち(Warhead Art、Svart、Obsidian Bon)に感謝しているよ。彼らは人柄も素晴らしく、アーティストとしても最高だ。

S:バンドのFacebookページを見ると現在は三人編成のようですが、サポートメンバーを集めてライブをやったりはしないのでしょうか?

I:Blutfahneは基本的に二人編成なんだ。ただ、Totenruneの同志Waldwegもかなり俺たちに協力してくれているよ!ブラックメタルは、神秘主義で満たされたシャーマニズム的な恍惚とも言えるだろう。だからステージで演奏するのはかなり難しい。あまりにも私的すぎるから。まるでルーン文字の呪文のように。闇へと深化すればするほど、嘘偽りのないものになるんだ。コンサートやパーティーは、運命の糸を燃やす炎とはあまりにかけ離れている……

S:昨年(2019年)キエフにメタルショップができましたが、Imogrimさんも店舗の営業に関わっているようですね。

I:Necropolisに店という概念は適さないな。同志が集まって音楽や文学について話し合ったり、バンドやレーベルについての決定を下す場所なんだ。ここでは「店」という概念は二の次だ。クラシックなメタルと関係のないものは何も置いていない。今風のクソみたいなものも置いてないし、ここにあるのは真のアンダーグラウンドなブラックメタルだけだ!おそらく初期のノルウェーのHellveteに近い雰囲気があると思うよ。

S:ウクライナは、キエフだけでも3店舗(Necropolis、Militant Store、Core Metal Shop)も実店舗のメタルショップがあります。とりわけ素晴らしいのは、どのお店もブラックメタル関連の取り扱いがとても多いことです。実際、ウクライナでは実店舗のメタルショップは人気なのでしょうか?

I:3店舗とも、それぞれのビジョンを人々に伝えていると思うよ。俺は自分が関わっている店のことしか話せないけど。俺たちはMilitant Zoneの同志を全面的にサポートしている。彼らは、自身の理想を神聖なまでに信じる凄い奴らだ。俺たちには多くの共通点がある。Core Metal Shopについて言うと、古くてカルト的な店だね。彼らが何年もの間スタイルを変えずにいてくれるのが嬉しいよ。

S:最近はウクライナでもMetal EastやAsgardsreiなどのフェスが開催されていますね。

I:どのフェスも、ハイレベルなパフォーマンスを伴った実に見事なフェスだよ。俺たちも行ったことがあるが、まったく質の高いフェスだと思ったね。ウクライナにおける最高のフェスと言っても過言ではない。

S:ウクライナのメタルシーンについてはどう思いますか?

I:俺はもっぱらブラックメタルに関わっているから、ブラックメタルのことしか語れないが、ここにはヨーロッパのブラックメタルの強力な軍団に肩を並べるような価値あるバンドがたくさんいるよ!ひとつ残念なのは、道化師のような奴らがブラックメタル界隈にもいることだ。意味のないノイズを作るだけで、本当にイライラさせられる。しかし、時間は彼らに無慈悲だからな。

S:あなたに関することも教えてください。普段はどんな音楽を聴いているのでしょうか?メタル以外の音楽も聴きますか?

I:俺はダンジョンシンセやクラシック音楽の大ファンなんだ。これらの音楽は、本を読んだり歌詞を書いたりするのに最適だ。その他の音楽はあんまり聴かないかな。

S:あなた自身、どのようにブラックメタルと出会ったのでしょうか?

I:子どもの頃から歴史や神話に興味を持っていたんだ。城や騎士、魔女、ノーム、ドラゴン、迷宮のような森、魔法……年齢を重ねるごとに、この趣味はますます俺の心を惹き付けた。そして、初めてBurzumやDarkthrone、Emperor、Satyriconのようなノルウェーのバンドの音楽やアートワークに触れた時、これこそが俺の内なる世界を反映した音楽だと気付いたんだ。

S:メタルに限らず、日本の音楽は聴いたことがありますか?また、日本にはどんなイメージがありますか?

I:Sabbat!!! Sigh、Abigail、Infernal Necromancy、Tyrant辺りを真っ先に思い浮かべる。俺にとって日本は、武士の名誉、祖国と家族への忠誠の鋼に包まれている。そして、信仰と先祖への忠誠を貫いた真の戦士の前哨みたいなものだと思っている。

S:Todesritterについても教えてもらえますか?これはあなたが運営する音楽レーベルなのでしょうか?

I:Todesritterは、LPやCD、カセット、バンドマーチを制作する本格的なレーベルなんだ。俺たちは、クラシックなスタイルのブラックメタルを独占的に取り扱っている。俺たちはファッショントレンドを追わないし、笑い者にされるメタルスターになることを望まない、本当に魂を込めて音楽を作っているバンドとだけ契約を交わす。今、10組以上のバンドと契約しているが、これは俺たちの旅のほんの始まりに過ぎない。まだまだ多くの価値あるリリースが待っているからな。

S:今後の計画について教えてもらえますか?

I:たくさんあるよ。今は同志Norrhemとのスプリットを制作中なんだ。 TodesritterからLPとCDでリリースされる予定さ。また、Walsungとのスプリットの再発も準備している。こっちはLPとA5デジパック。これが直近の計画だ。

S:改めてインタビューに応じていただきありがとうございました。最後に日本のメタルファンにひとことお願いします!

I:こちらこそインタビューしてくれてありがとう!本物のメタルファンのみんなは、最初に選んだ道をそのままひたむきに歩み続けてくれ!

 

 

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Dekalog11でもBlutfahne の音源やマーチを取り扱っています。

【CD】Blutfahne “Twilight of Faith(Digi)”

【CD】Blutfahne/Грома Глас “Awakening(Digi)”

【T-shirt】Blutfahne