【Massenhinrichtung】ベラルーシは危険な場所ではないよ。勇気を出しておいで。

※このインタビューは2018年1月のものです。

ロシアの左下、ポーランドの右隣に位置する国、ベラルーシ。親露国として知られ、欧州の独裁国家とも呼ばれている。最近は日本人も数日間ならビザなしでも旅行できるなど、観光客にオープンになってきたものの、これまではロシア同様に滞在には必ずビザが必要だった国でもある。あまり情報も入ってこず何かと謎の多い国だが、意外にも良質なメタルバンドが多い国だ。
当サイトにMassenhinrichtungのメンバーから連絡が来たのは数か月前のこと。ポーランドのブラックメタルだけじゃなくて俺たちの曲も聴いてくれとボーカルのHresvelgrから連絡が来た。聴いてくれも何も、うちのディストロでも取り扱ってることを伝えると非常に喜んでくれた。2004年から活動を続けるこのバンドは、ペイガンメタルやデスメタル、はたまたポスト・ブラックが入り混じったようなどこのジャンルにも属さないようなブラックメタルを演奏している。今回は、ヴェールに包まれたベラルーシのことも織り交ぜて、Hresvelgr(Vo)、Ksaltone Aeon(Gt, Key, Vo)にインタビューを行った。

 

Massenhinrichtung × Metal Mania Sayuki

Sayuki(以下S):まずはバイオグラフィーを教えてください。

Ksaltone Aeon(以下K):俺は2004年、残虐なモノを称賛するためにMassenhinrichtungをミンスクで結成したんだ。2008年に1stフルレングス『Go Beyond Gist』を、ポーランドのレーベルEastsideからリリースした。2010年にはライブメンバーを集めて、ライブを行うようになった。2012年にRaven Throne(ベラルーシのアトモスフェリック・ブラック)とスプリット『Adzinota Kruka』を製作して、2015年にはドイツのDarker than Black Recordsから『Zakon Zbroi(Закон зброі)』を出したんだ。その年、バンドの中で悲劇的な出来事が起きて、メンバーが劇的に変わった(訳者注:悲劇的な出来事とはおそらく、ギター、キーボード、ボーカル担当だったStognが首つり自殺で亡くなったことと思われる)。今、俺たちは3rdアルバムの製作に没頭しているんだけど、もうレコーディングは終わっていて2018年にはリリースされる予定だよ。

Hresvelgr(以下H):結成後最初の6年はスタジオだけで活動していたけど、ライブをやるようになってからすでに7年がたった。過去数年で数回のメンバーチェンジがあったものの、今の俺たちはまさに完璧なバランスを保っていると思う。そしてもっと良いものを作れるようにに努力しているよ。

S:あなたたちはこれまでに2枚のフルレングスと何本かのデモ、スプリット、EPをリリースしていますね。あなたたちの演奏する音楽は少し変わっていますが、中にはペイガン・ブラックメタルのようなサウンドも感じられるような気がします。一体どのジャンルに当てはまるのでしょうかね。また、影響を受けたバンドやアーティストなどはいるのでしょうか?

K:Massenhinrichtungの音楽に最も適したジャンルはブラックメタルだとは思うよ。俺たちは様々なジャンルから影響されている。デス/ブラックメタルやヘヴィメタル、そしてフォーク的な要素からの影響が、俺たちの曲を独特なものにしているんだ。はっきり言うなら、俺たちは正真正銘のベラルーシのメタルを演奏していると言えるだろうな。
だいぶ初期の頃は、俺はDarkthroneやKatatonia、Sodom、Burzum、さらには他の数多くのメタルバンドに影響を受けたよ。今となっては、他のアーティストから影響を受けずとも、自分自身のイマジネーションだけで、そして身の回りに起きた出来事や俺を取り巻く現実からインスピレーションを得て作曲することができるようになった。

H:俺たちは、これまで何千回と繰り返されてきた音楽には興味がないという結論に至ったんだよ。だから、自分たちのやりたいことをやって、細かいジャンルにこだわらないようにしている。確かにいくつかの曲にはペイガンメタルの要素を感じられるだろうけど、新曲にはスタンダードなブラックメタルとはまた違った要素を見いだせるはずだ。ちなみに俺個人が強く影響を受けているのは、Furia、Thy Worshiper、Thy Catafalque、後期のForgotten TombやMardukだよ。

S:バンド名のMassenhinrichtungはドイツ語で「Mass execution(集団処刑)」という意味だそうですね。なぜこの名前にしたのでしょうか?誰が決めたのですか?

K:オーディエンスに衝撃を与えるような名前にしたいと思って俺が決めたんだ。長くて難しい発音と残忍な意味が、俺にとってはメタルバンドにピッタリに見えた。刺激的で鋭い名前だよな!

H:加えて、これは俺たち人間の歴史上の恐ろしい出来事、人生の本物のダークサイドを永遠に記憶させるものだ。死と最大限に近い。

S:どのようにメタル音楽を聴くようになったのですか?メタル以外の曲を聴いたりもするのでしょうか?先の回答と少しかぶってしまうかもしれませんが、お気に入りのバンドがいたら教えてください。

K:子どもの頃はカセットでハードロックやヘヴィメタルのベスト盤を聴いていたよ。Ozzy Osbourne、Manowar、Iron Maiden、Savatage、Van Halenなんかのね。Iron MaidenとOzzyが特に気に入ってさらにカセットを買ったりした。記憶にある限り、 Manowarの「Return of The Warlord」が本物のヘヴィメタルにハマるきっかけだったと思う。それからデスメタルやグラインドコア、ブラックメタルを聴くようになった。だけど今はどんなジャンルの音楽も好きなんだ。メタル、ロック、ハードコア、アンビエント、ポップス、その他色々……。お気に入りのアーティストなぁ……う~ん、たぶんAnathema、Kino、Dead Infectionが俺にとっては重要なバンドかな。

H:一番最初はThe Rolling Stones, Aerosmith, Led Zeppelin, David Bowieのような古いロックを聴いていたよ。ちょっとしてからSlayerやSepulturaと出会ったんだ!13~18歳までの長期間はブラックメタルとデスメタルだけを聴いていた。今は色々なジャンルの音楽を聴くし、ジャンルにこだわったりしない。ただ、トリップ・ホップのようなインダストリアル音楽が大好きなんだ。俺のお気に入りのアーティストねぇ……難しい質問だな。ほんの一部だけ答えるなら、Paradise Lost、Marilyn Manson、Furia、Wumpscut、Rotting Christ、Katatonia、Seether、Anathema、Oomph!、In Extremo、Rome、Neuroticfish、Cindergarden、Velvet Acid Christなどかな……

S:ベラルーシは日本人にとってはミステリアスな国です。まだまだあなたたちの国についてたくさんの情報を得ることができません。ベラルーシのメタルシーンはどのような感じなのでしょうか?ベラルーシで人気のある音楽は何ですか?

K:おかしいな、だってベラルーシは近年、徐々に旅行者にオープンになっているのに。(訳者注:2017年から日本を含めた世界の80カ国のいずれかの国籍を持つ場合、5日間までならビザなしで滞在ができるようになった。2018年からはさらに緩和され、30日までビザなし滞在ができるように。なお、これまでは短期滞在でも必ずビザの取得が必要だった)

H:いや、俺はドイツ人の若者でさえ俺たちの国についてほとんど何も知らないという事実をよく知っているから、遠く離れた日本人がベラルーシについて特に知らなくても驚かないよ。俺が思うに、ベラルーシのメタルシーンは正統派でオーセンティックといった感じだな。俺たちの国は本物の真珠を持っているんだ!でもそれと同時に、よく知られた海外のバンドの真似ばかりをして、真新しいことを何一つしないバンドもいくつか存在する。俺たちのシーンは独自の方法で発展しているけど、ベラルーシのバンドが海外のリスナーに自分たちの音楽を伝えるのはまだ難しい。これが現実なんだ。俺は、みんながベラルーシのロック/メタルシーンにお気に入りのバンドを見つけることができると思っている。そして、フォーク音楽はベラルーシではとても強い。一般人の音楽嗜好についてだけど、特別なことは無いかな。ロック、メタル、ポップス、ヒップホップ……あ、でも若い人がロックやフォークを聴いている確率は、他のいくつかの国に比べたら高いかもしれない。

S:わたしはいつかベラルーシに行ってみたいと思っているんですよ。旅行者にオススメの場所はありますか?そして、もしメタル好きな人にオススメの場所(バーやライブハウス、メタルショップなど)があれば教えてください。

H:そうだな、俺たちの国にはとても面白くてトラディショナルな場所がいくつかある。素晴らしい城もあるし、ベラルーシの歴史博物館も興味深い。ミンスク、フロドナ、ナヴァフルダク、ニャスヴィシュ、リダ、ミールについてググるといいよ。それに綺麗な自然もたくさんあるよ。ベラルーシではたくさんの湖や沼、森や大きな国立公園がある。
ははは、俺はどこかを宣伝したくはないな。もし誰かベラルーシに来たいという人がいたら、俺に連絡をしてくれれば面白い場所を紹介するよ!

S:ちなみに失礼を承知でお伺いしますが、ベラルーシは安全な国なのでしょうか?旅行者が気を付けておくべきことなどはありますか?

H:いや、旅行者にとって危険な場所ではないよ。勇気を出しておいで。ただ、数日以上滞在する場合は、手続きが必要なことを覚えておいて。

 

S:ところで、このインタビューの依頼をする時に、日本に行ってみたいと言っていましたね。日本についてはどんなイメージがありますか?何か日本のバンドやアーティストを知っていますか?

H:悪いんだけど、バンドはGallhammerとSighしか知らないんだ。俺の友人で日本に行った奴がいるんだけど、彼は日本での生活をたくさんのクールな写真に収めて、ミンスクで写真の展示会をやっていたよ。それはとにかく最高ですごく興味深かった!だから俺は日本についてちょっとは知っているつもりだよ。日本は、古いものと新しいものを融合させた多くの面白い文化を守り抜いてきた、というイメージがある。俺にとって日本は非常に興味をそそられる国なんだ!日本に行ったら何をしたいかは今すぐには思いつかないんだけど……ただ、こことは異なった街や人々を見てみたい。残念ながら、俺たちにとって日本に行くビザを取るのはかなり難しいんだけどね。だから、今は夢見ることしかできないよ。

S:今は、バンド以外に何かお仕事をしているのですか?

H:俺はデザイナーとして働いているよ。アートや文学、映画にはかなり情熱的なんだ。歴史やフットボールについてもね……もちろん自然も好きだし、旅行するのも大好きだよ。

S:インタビューを受けてくださってありがとうございました!最後に一言お願いします!

ベラルーシに来て伝統的な場所やベラルーシのバンドのライブに足を運んでみてくれよ!きっと気に入るに違いない!そして俺たちのニューアルバムの情報をチェックしてほしい。いつか日本で会おう!

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