【Velnias from Darkened Nocturn Slaughtercult】あれは本物の血だ。信頼できるところから入手した豚の血を使い続けている。

90年代後半からドイツで活動しているブラックメタルバンドDarkened Nocturn Slaughtercult。オールドスクールでありながら、攻撃性や哀愁すら漂わせるブラックメタルを演奏する彼らだが、やはり目を引くのはポーランド出身の女性ボーカルOnielar氏だろう。メタルバンドの女性メンバーと言うと、セクシーさやフェミニンさを前面に押し出すことも多いが、Onielar氏はあえて女性性を武器にすることなく男性と対等なスタイルでバンドに君臨し続けている。血を吐きながら悪霊に憑りつかれたかのような絶叫をぶちかます彼女は、女性らしさを醸し出しているわけではないのに美しくもクール。今回はそんなバンドを初期の頃から支えるギタリストVelnias氏にインタビューを決行!かなり英語が達者でアーティスティックな回答をしてくれたおかげで、翻訳にも手こずり読み辛いところもあるかもしれないが、何卒ご容赦願います。

Velnias(Darkened Nocturn Slaughtercult) × Metal Mania Sayuki

Sayuki(以下S):インタビューに応じていただきありがとうございます。まず最初にバイオグラフィを教えてください。

Velnias(以下V):悪いが、我々のHPにある「Tales from a darkened past」から引用させてくれ。Darkened Nocturn Slaughtercultは1997年の寒い冬の時期に姿を現した。初期のオールドスクール・ブラックメタルの栄光の日々が、ゴシックムードやスカンジナビアの先人たちの裏切りで蝕まれた。後に明らかにその忠誠を変えたのはOnielar(Vo, Gt)とAriovist(Dr)という2人の創設メンバーであり、彼らが意図していたことは、伝統あるブラックメタルに貢献するバンドを呼び寄せることだった。おおよそ半年の邪悪な月日が経ち、Velnias(Gt)の加入によってラインナップは強固なものとなった。Darkened Nocturn Slaughtercultは、サタニックでニヒリスティックな信念とともに、彼らの心に深く刻み込まれたロウ・ブラックメタルスピリットへの陰謀を象徴している。過去20年間で、デビュー作のミニアルバム、5枚のフルアルバム、そしていくつかのスプリットやLPがリリースされた。もっと情報を知りたい場合は、我々のHPを参照してくれ。www.slaughtercult.de

S:作曲はどなたが担当しているのでしょうか?

V:D.N.Slaughtercultは長年にわたり安定したラインナップを維持している珍しいバンドだ。これはまた、各々どのように創作を生みだすかという点で曲作りにも影響する。最初期の『The Pest Called Humanity』は1997年にまでさかのぼる。当時の状況は今と比べると、何もかもが異なっていたんだよ。全曲、Onielarか私のどちらかがアイディアを出していた。アイディア構成はリハーサル室で始まった。何曲かは我々のどちらかが作って、何曲かは提供してもらったりした。2001年にHorrnが加入したが、彼は優れたドラマーというだけでなく、弦楽器を演奏することもできる。彼の熱心さもあって、『Saldorian Spell』や『Necrovision』では彼もアイディアを出してくれるようになった。実際のところ、バンドメンバーは全員曲作りに貢献する権利がある。どの楽器もそれぞれ重要なパートだと見做しているからね。現代技術のおかげで、本物のドラムをプレイせずとも簡単に曲にアレンジを施すことができるようになったな。『Saldorian Spell』以降、作曲関連は私が中心となりつつある。

S:作詞する時、どのように世界観を決めているのですか?また、どのようにアイディアを思いつくのでしょうか?

V:創造性を強制することはできない。少なくとも我々は、座りながら作詞作曲をすることはできないし、したくもない。創造は起こるべくして起こるものなのだ。これはかなり難しい作業だよ。正しい精神状態が要求されるからだ。日々の生活は無気力な精神にまみれている。本来あるべき自分を、悲しみと不安に溺れさせる恐れがある。いつも警戒していなくてはならないのだよ。時々不意を突かれることがあるが、そういう時にエネルギーや活力が流れ出す。孤独の辺境から自分を引き戻さなければならないという問題を認識しておくんだ。そうした時、心は空虚になるだろう。いわば、静かで空虚な海原を写し出しているのだ。その表面にひとつの思考を投げかける。すると、それは円を描くだろう。その反響はどんどん膨らんでいき、重なり合って反射する。新しい「神」を生み出すために、お互いに交換し合い、混ざり合い、切り開いていくんだ。最初に表面に投げかけた思想は、一見恣意的に見える。しかし、それらを理解していれば真実として認識されていくだろう。

S:D.N.SlaughtercultでBathoryのようなバンドのカバー曲を作る予定はありますか?

V:過去にカバー曲は作っている。ほとんどの曲はLPに収録されているんだが。MayhemやImmortal、Ulverなどスカンジナビアのバンドや、Death StrikeやPurgatoryもカバーした。今のところ他のカバー曲を演奏する計画はない。

S:プロデューサーがArmin Raveですね。彼がHorrnとともにPavorというバンドで活動していたのは存じ上げていますが、なぜその彼がD.N.Slaughtercultをプロデュースし始めたのでしょうか?

V:ArminはHorrnがバンドに加わる前から我々の友人だった。彼はアクティブなミュージシャン故に、レコーディングの過程全体に興味が高まっていたんだ。我々がデビュー作『The Pest Called Humanity』をレコーディングし始めようとする頃には、彼は別のスタジオで制作補助の経験を積んでいた。我々にとっては、身近な友人と仕事をすることがもっとも重要なんだ。それに、当時の我々には非常にわずかな予算しかなかった。D.N.Slaughtercultは何年もレーベルを通さず自主制作をしていた。最初のリリースはメンバーで自腹を切ったのさ。今日までArminは我々の曲をレコーディングしてくれている。噂によると、彼はセッションメンバーとしていくつかの音源に参加しているそうだよ。

S:D.N.Slaughtercultが活動を始めた時、当時のドイツのメタルシーンはどのようなものでしたか?

V:今と変わらない。大量のバンドとマガジンが存在していた。非常に優れた将来有望なバンドもいたし、使い捨ての兵士のようなバンドも多かった。我々は、そういったシーンは大して気にかけていない。バンドを天体として見るならば、バンドは別の物体が周回していることに気が付く。どのバンドもどの一般人も、それらを自分たちのシーンに引きつけようとするのは当然だ。我々は、量より質に重きを置いている。君の軌道上に輝く星とデブリがあり、そのどちらかを選べるとしたら、君はどちらを選ぶかね?

S:影響を受けたバンドやアーティストはいますか?

V:確実に言えるのは、スカンジナビアの初期ブラックメタルだ。我々は長年の間、さまざまな種類の音楽を開拓してきた。心を覚醒させることができれば、変化も歓迎するよ。

S:最後のアルバムを出してから4年か経ちます。新作の予定はありますか?

V:我々の最新アルバム『Necrovision』は2012年の12月までさかのぼる。そろそろ5年の時が経つな。この間、我々は対処せねばならない問題があったんだ。その問題は今年初めに起きたんだが、ニューアルバムを来年に延期したことだ。近頃の我々は、今年末までにスタジオ入りできるように最後の仕上げに取り掛かっているところだよ。次の作品は8曲入りで、そのうちのいくつかは『Necrovision』以前にさかのぼったもので、残りは今年作ったものだ。根っこは100パーセントD.N.Slaughtercultでありつつも多彩となったアルバムを期待していてくれ。


S:Onielarさんの衣装とギターはオーダーメードでしょうか?そして、あの衣装の意味が気になります。『エクソシスト』に出てくる悪霊に憑りつかれた少女リーガンを思わせますよね。

V:Onielarと私はES Guitars (http://www.esguitars.com)にサポートされているんだ。すべての楽器は人の手によって作られたものさ。まぁ、明らかに我々の楽器は奇特な人たち向けだな。
質問の重要な部分に移ろう。ライブパフォーマンスは聴覚以上のものを含める必要がある。バンドがステージに上がるということは、視覚的な側面を付け加えるチャンスだ。より多くの感覚が目を覚ますのだ。完璧で満たされた体験をすると、観客は呼吸を止め、しばらくの間言葉すら発せなくなるだろう。装備と強烈な視覚効果の組み合わせは、香りとエクストリームな音楽を組み合わせたような効果を加えるのさ。文字通り、精神的興奮の渦に引きずり込まれるのは痺れるように衝撃的な体験だ。そのエクストリーム性に目が釘付けになるだろう。我々が注目しているのは、非常に美しい何か、もしくは身の毛もよだつような恐ろしい何かに引きつけられることだ。『Necrovisions』の神秘性のためにOnielarは衣装を変えた。人々はそれぞれ違った解釈を持っている。君にとってあの衣装はエクソシストの主人公のように見えるかもしれないが、他の人からしたらクトゥルフやバンシーのように見えるかもしれない。

S:ライブでOnielarさんは口から血を吐きますよね。こないだあなたたちのライブを観た時にOnielarさんが吐いた血をちょっと浴びたのですが、特に臭いがするわけでもなかったので、血糊かと思っていたのですが・・・

V:あれは本物の血だ。我々の最初のライブは血を使わないで行った。それ以降は、信頼できるところから入手した豚の血を使い続けている。血液が凝固しないように添加物をひとつだけ混ぜているが、それ以外は何も入っていない純粋な血だよ。

S:Onielarさんがポーランド生まれなのは知っているのですが、Velniasさんもポーランド出身ですか?どのくらいドイツにお住まいなんでしょうか?

V:D.N.Slaughtercultは、ポーリッシュ・ジャーマンバンドとよく言われているが、部分的にしか合っていない。君の言うように、Onielarはポーランドで生まれた。だが、子どもの頃すでにドイツに移住している。彼女はポーランドにルーツを持つ唯一のメンバーだ。その他のメンバーもポーランド出身かのような名字だが、ドイツ出身だよ。ここにどれくらい住んでるかって? 何世紀も、と答えておこう。

S:日本で知っているメタルバンドやアーティストはいますか?

V:自分自身について言うなら、90年代半ばにSighのMiraiと誇りを持って連絡を取り合ったことを思い出す。Sighの他なら、Sabbatが思い浮かぶな。それと、Zero Dimensional Recordsは、我々のマーチャンダイズを君の国で流通させて何度かサポートしてくれたことがある。

S:もし機会があったら、日本でライブをしたいですか?

V:ああ。オーガナイザーもプロモーターも気軽に連絡をしてほしい。旅費と大量の寿司のために演奏するよ。いや、真面目な話、我々は何かしら手配できるようにするので、そのような話があれば気軽に連絡をしてほしい。連絡に関してだが、頼むから糞みたいなオンラインコミュニティ(Facebookページのこと?D.N.SlaughtercultのFacebookページはオフィシャルではなくファンページ)宛てに連絡はしないでくれ。我々が運営しているものはではない。このサイトに載っているすべてが真実だ。(www.slaughtercult.de)

S:お時間を取っていただきありがとうございました!最後に日本のファンにひとことお願いします!

V:最後の祈りとともにこの言葉で締めくくろう。「Omnis Immundus Spiritus」からの抜粋だ。

”He, whose culminating gnosis exceeds the horned serpent,
whose guise is girt with light most lucent,
whose numious will the welkin distends,
whose shaping the invisible boundary transcends,
he, whose limitless enrails permeate throughout time – this sanctuary is now thine.
Ergo draco maledicte – te rogamus, audi nos.”

【終】

インテリジェンスな雰囲気が文面からも漂うVelniasさん。ライブで使っていた血は本物だったんですね。そろそろ新作が出るかもしれないようなので楽しみです。近日中にD.N.SlaughtercultのTシャツ等のマーチ、CDを入荷させる予定ですので、興味のある方は引き続きDekalog11をチェックしてくださいね!

画像引用元:www.slaughtercult.de