Witchmaster(ウィッチマスター)

ポーランド西部の都市Zielona Góra(ジェロナ・グラ)で結成されたスラッシュ/ブラックメタルバンド。ドラマーはBehemothInfernoが務めており、ベースは現在はChrist Agony、かつてVaderでも活動していたRayesz(レイヤシュ)。Inferno以外のメンバーは全員Zielona Góra出身だが、ギターのGeryon(どちらかというとKaliの名前で知られている)は現在ロンドンに住んでおり、タトゥーアーティストとして活躍している。

Witchmasterの音楽は、ひとことで言うと、「暴れるための音楽」だろうか。悪く言えば、どの曲もこれと言ったひねりはなく、興味の無い人にとっては全曲同じように聴こえてしまうおそれあり。しかしこれがまた、頭をすっからかんにして聴くにはもってこいの、ライブ映えする曲ばかりなのである。初期の頃はボーカルもデスボイスではなく、パンク/ハードコアな雰囲気を醸し出していてブラックメタルとしては新鮮に聞こえるかもしれない。ところどころ挟み込まれる中途半端でなんとも耳に残りづらい速弾きギターソロも、地下臭さを与えていてなんともカッコいいのである。Infernoのドラムはもちろん安定の炸裂具合を発揮しているのでご安心を。

そして、民度の低さがうかがえる曲名も良い。”Fuck off and Die”だなんて、そこらへんの中学生が作詞したんじゃないかと疑わんばかりである。こんなふざけた曲ばかりなのだが、ライブではエクストリームな雰囲気にこだわっている様子も見られる。まず、ステージの前方には毎回必ずカミソリ刃付きの危険すぎる金網が設置される。カミソリがついていることを知らずに興奮した観客がその金網を握って手から出血している姿もライブでは観ることができる。そして時に、血糊が入った注射器(一応針の部分にはキャップ付きなので安全と言えば安全)を何十本も観客フロアにぶちまいたりと、あほ丸出しのエクストリームさがポーランド国内でそこそこ人気の秘訣なのかもしれない。(日本ではほとんど知られていないが、本国では意外とファンがいるようだ)

真偽は定かではないが、Infernoは自らWitchmasterでプレイすることを志願したという噂もある。実は彼はBehemoth以外にも、このバンドやAzarathなどでも活動している。ただ、現在はBehemothの活動が忙しいため、数年前からライブではArkonaTaranで活動するZaalaが代打を務めている。2016年の11月にはなんとWitchmasterのライブにギタリストとして参加したInferno。ドラムテクもさることながら、ギターのテクニックもベテランの域!合同練習は2日間しかしなかったのに、完璧なプレイを見せてくれた彼はきっと自宅で一生懸命自己練をしていたに違いない。

わたし自身、実は最初は「う~ん、なんだかなぁ。パッとしないんだよなぁ、このバンド」と思っていた。が、しかしライブを観る度に、曲を聴けば聴くほど、徐々に徐々に彼らの世界にハマっていく自分がいました。

SAYUKIのお気に入り

★Infernal Storm(Violence & Blasphemy/2000)
もとは1997年リリースのデモ”No Peace at All”に収録されていたもの。ドラムはまだInfernoではない。衝動だけで突っ走るWitchmasterらしさが満点の曲ではあるものの、曲の中盤で突拍子もなくガラリと曲調が変わるのもカッコいい。

★Fuck Off and Die(Masochistic Devil Worship/2002)
Witchmasterの歌詞はたいていしょうもないので気にも留めないのだが、こればっかりはさすがに気になって仕方ないだろ(笑)曲の長さも2分と、爆走して気づくとあっという間に終わっている。こういう頭をからっぽにして聴ける曲は、本当にライブで盛り上がる。

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画像引用元:http://www.metal-archives.com/bands/Witchmaster/4287